第22章 私の知らない幼馴染
《頑張ってるあくあちゃんを見て、僕も最初は頑張ろうって思ってた。けどやっぱり僕には無理だったんだよ。………ヒーローなんて、二度と目指さない》
話を聞く限り彼は渚沙なのに、
私の知っている渚沙とは違う。
私の知っている渚沙はそんな事言わない。
静かに言葉を聞く私の周りでは
先生やクラスメイト達も
この会話を聞いているけど、
誰も何か口を挟もうとはしなかった
《だから、全部諦めて、何もかも捨てた。つもりだったんだけど…やっぱりあくあちゃんの事だけは、諦められない》
『…どういうこと?』
《ヒーローは諦めたけど、あくあちゃんの事は諦めない。だから絶対、手に入れてみせる》
『渚沙、何言ってるの?』
なんだろう、この違和感
不穏な空気
不穏な音。
《そのうちまた、会いに行く。そしたら今度はずーっと一緒だよ》
『何…言って…』
《じゃ、またね、あくあちゃん。》
『え、待って渚沙っ!!』
私は勢いで消くんの手から
ケータイを奪い取る
《__________プツッ》
『切れちゃった…』
(渚沙……どうして………)
驚きと悲しみの混ざった感情を抱いたまま
ぺたりと床に座り込んだ。
「あくあ、大丈夫か?…渚沙ってもしかして、お前が昔話してくれた…」
『…うん。昔突然行方不明になった、私の幼馴染。』
消くんには、少しだけ話したことがある
でも…今話していたのは本当に渚沙なの?
なんだか、怖い
周りにいるクラスメイトも何か感じたのか
黙ってその場に立っているままだ。