第22章 私の知らない幼馴染
《ザザーーーッ________あ、よかった繋がった。もしもし聞こえてる?あ、返事はしなくていいよ。聞いてくれればいいから》
(誰…………?)
雑音が消えると今度は
男の子の声が聞こえて来た。
少し高めの声で、
多分同い年くらいの男の子だと思う
(でも、どうして私のケータイに…?)
《久しぶりだね、あくあちゃん。僕の事覚えてるかな?ま、10年も前の頃のことだし覚えてなくても仕方ないけど。》
『………なぎ、さ…?』
咄嗟に口から出たその名前
私の幼馴染の名前だ。
昔会ったことがある男の子で、
私の事をあくあちゃんと呼んで、
自分の事を僕と呼ぶ、
そんな人がいるとしたら
心当たりはそれしかない
10年前に突然姿を消した、私の幼馴染。
《わ、覚えててくれたんだ、嬉しい!まさか電話越しに分かるなんてびっくりだよ。…でも、それなら話が早くて助かる》
『え……本当に渚沙なの…?』
私はそう問いかけるけど
電話越しの彼は何も答えず話を続ける
《昔…“一緒にヒーロー目指そう”って、“僕の個性をすごい”って、そう言ってくれたよね。あくあちゃんだけは僕の個性を知っても味方でいてくれて、すごく嬉しかった。
…………でも、もう全部諦めたんだ》
昔の話を知っている…
つまり彼は、本当に渚沙なんだ。
でも…
『全部諦めたって何…?』