第21章 次の訓練は1対1
『えっと…え…?』
耳元で囁かれたその言葉、
理解できない程私の理解力は低くないけど
理解できる程の理解力も持ち合わせていなかった
『あっ…ちょっ…!?』
黙ったままだった焦凍くんは突然
私の耳を後ろからカプっと噛み付いて来て、
耳が弱い私は思わず声が漏れてしまう。
「やっぱり、あくあって耳弱いんだな」
おまけに耳の横で喋るもんだから
焦凍くんの吐息が耳にかかって
余計に心臓の鼓動が早まるのを感じた。
『…しょ、焦凍くんっ!急がないと授業始まっちゃう、からっ…!』
私がそう言うと
焦凍くんはやっと私の顔から離れて
背中のファスナーに手をかけた。
「そうだな。ファスナー次からちゃんと気をつけろよ。……開いてるだけならまだしも…下着見えてんのはまずい。今回誰にも見られてなかったからよかったけど」
誰にも見られてなかったって…
焦凍くんは見てるじゃん!!
いや、教えてくれたから感謝すべきなんだけども
でもほんと、教えてくれてよかった…
あのまま授業行ってたら恥ずかしすぎる
「はい、ファスナー閉めたぞ」
『ありがとう焦凍くん!よし、行こ!』
私達はだいぶ前を歩いているクラスメイトたちに
追いつくため駆け足で訓練場へと向かった。
(それにしても…最近の焦凍くん、なんか変!!さっきの事も何事もなかったかのようにしてるし…)
この疑問の答えが体育祭の後に分かるなんて
知りもしない私は、走りながら横目で
焦凍くんの方にちらっと視線をやった。