第19章 君にはやっぱり、隠せない。
そのまま教室のドアに
手をかけようとしたその時
───『ちがっ……違うの!これは、そういうのじゃなくて…』
───『久しぶりに寧人に会えて安心しちゃったのかな…、なんか…一気に涙が…ごめん、さっきから言ってる事が矛盾してるよね』
あくあもまだ、本当は物間の事が
好きなんじゃないかって思わせられるこの発言
そして、長い沈黙が続いたかと思えば
それは沈黙なんかじゃなかった
微かに聞こえるあくあの泣き声
声を押し殺して、
我慢していたものが溢れ出て来たみたいに。
usjの時も、
今にも泣きそうな顔してたくせに
一度も泣く事はなくて、
多分あくあは人前で簡単には泣かない
そんなあくあが今物間の前で泣いている
あくあが物間の事をどう思っているか
なんて口に出さなくなってなんとなく分かる
少なくとも、俺達よりもあいつの方が
あくあに信頼されているということ。
───『私…っ………ずっと…一人でっ……本当は怖くて、弱音だって沢山あって…!!』
初めて聞いた、あくあの本音
いつもの明るいあくあの声とは違う、
いつもより弱々しくワントーン高い声
廊下にいた俺達3人は
2人のいる教室にそっと背を向け
自分の教室に戻るよう歩き出す
あくあが物間だけに見せた姿
それを盗み聞きするのは
人として本当に良くない気がした
まあ実際はそれだけじゃない。
2人の会話を聞いていると
現実を突きつけられたみたいで
聞いているのが辛かった