第19章 君にはやっぱり、隠せない。
– 物間side–
「それは、あくあの事が好きだからだよ。」
僕がそう言った後、
突然あくあの目から微かに涙が溢れた
「あくあ!?ごめん、泣かせるつもりじゃ──…」
突然泣くとは思っていなかったので
あわてて声のトーンを明るくする。
『ちがっ……違うの!これは、そういうのじゃなくて…』
違うとは何に対しての違うなのだろう
あくあは顔を隠すように急いで
袖で涙を拭くと僕の方に向き直る。
『久しぶりに寧人に会えて安心しちゃったのかな…、なんか…一気に涙が…ごめん、さっきから言ってる事が矛盾してるよね』
なんだよ、それ…
それってつまり、
本当は僕と会えて嬉しいって事じゃないのか?
僕の為とか、個性がどうとか、
そうやって理由をつけて離れようとしてるけど
あくあの本当の気持ちはやっぱり…
僕は咄嗟にあくあの腕をつかんだ。
『ど、うしたの??』
そう言って僕を見たあくあは
涙を堪えるかのように唇をきゅっと結んでいる
「僕の前でくらい我慢しなくていい」
『…我慢なんかしてない』
「そんな表情して言われても説得力ないよ」
『…お願いだから、もうほっといて』
「ほっとけないからここにいる」
『……。』
僕もあくあもお互いに主張を曲げない。
“我慢なんかしてない”
あくあはそういうけど、そんなの嘘だ
あくあが嘘をつく時はやけに口数が
多くなるか少なくなるかの二択
今はその後者である。
「どうせ唯一信頼できる消太さんに対してだって心配かけたくないからって強がってるんじゃないのか?」
『強がってなんか──…』
「強がってる!!本当は弱音だって誰かに聞いて欲しいんだろ!…………それに僕は、そんな簡単にいなくなったりしない」
そう言った後、僕はあくあを引き寄せて
あくあの髪を撫でながらそっと抱きしめた。