第17章 この感情は、厄介だ
–あくあside−
あの時勝己くんが来てくれなかったら
どうなっていたか分からない。
場合によってはもっと大変な事に
なっていた可能性だってある。
勝己くんが何を思って“何も出来なかった”
と言っているのかは分からないけど
少なくとも私から見れば
何も出来なかったなんてことはないと思う。
『だから勝己くんが自分に対して怒る必要なんてないよ』
「……。」
勝己くんは相変わらず無言のまま俯いている
私はくるっと体の方向を変えると
勝己くんの正面にあるベットに腰掛けた
『ほら、こんなに静かな勝己くんじゃ勝己くんらしくないよ〜??』
私は勝己くんの頭に手を伸ばすと
わしゃっと勝己くんの髪の毛を撫でた
見た目はツンツンしているけど
触れてみると案外柔らかい
(まるで…勝己くんの心みたい)
いつも怒鳴ってて、自信家で、
個性もとっても強くて、
でもプライドが高い分
実は繊細で。
初対面の時とはだいぶ印象が違う。
「…………テメ、俺を撫でるたァいい度胸じゃねえか」
僅かな沈黙の後に勝己くんが言葉を発した
俯いていて表情はよく見えないけど
少しニヤッと口角が上がったように見える
『お?いつもの勝己くん復活?』