第15章 暖かくて、懐かしい。
−no side−
あぁ、暖かい…
懐かしいな…この感じ…
あの時も、
こうやって誰かに抱きしめられたっけ…
ハッと顔を上げると、
私を抱きしめていたのは焦凍くんだった
自分じゃ分からなかったけれど、
この時私が生み出していた水の渦の
威力は格段に落ちていたらしい。
助けに……来てくれたの…?
焦凍くんに抱きしめられると、
何故か凄く安心する
さっきまでの不安も一緒に包み込まれて
「大丈夫だよ」
って呼びかけてくれているみたいだ
『焦…凍くん…』
震えた声で彼の名前を呼ぶ
なんでここにいるの、とか
どうやって来たのとか、
聞きたい事はあるけど今は
一言言葉を発するだけでも精一杯だった
「落ち着けあくあ。」
轟はあくあを抱きしめたまま
優しく声をかける。
その言葉を聞いたあくあの意識が
個性から離れたおかげか
あくあを中心に
渦巻いていた水の量は少なくなり、
中からも外の様子がが見えるようになっていた
外には心配そうに
声をかけ続けるクラスメイト達、
渦の勢いが収まったことで
あくあの耳にはしっかりと届いていた。
『…っだめ…私から離れて…!!』
ひとまず収まったかと思いきや
突然あくあの両手から
すごい勢いで轟に向かって水が放出された
そのままあくあと轟の距離は
また離れてしまう。
渦の勢いが収まったとはいえ、
暴走を止めることができたわけじゃない
轟が来たことであくあの意識が
個性から削がれた分、
制御していたものまで溢れ出てしまったのだ