第15章 暖かくて、懐かしい。
−あくあside−
『どうして……止まってくれないの…っ!』
怖い、
自分の個性が、怖い。
そう思ったのは、これで何度目だろう
昨日の戦闘訓練、今日の治癒の成功
少しは個性を
扱えるようになっていると思ってた
でも、やっぱりそんな簡単なわけがなくて
そんな事思ってしまっていた
自分が馬鹿らしい
最初から分かってた
私の個性は、悲劇しか起こさない
人を救うどころか迷惑かけて、
怪我させて、
やっぱり、
そんな人が
ヒーローになっていいわけないんだ____。
「あくあ!!てめェ…絶対無事でいろって言ったよな!!」
渦の外から微かに
勝己くんの声が聞こえた。
(勝己くんにも無事でいてねとか言っておいて私がこんなじゃダメだね…、こんな姿、見られたくなかったな…)
「あくあ!!」
私の周りを囲んで渦巻く水の音が耳に響く
まるで不安定な私の感情を表しているみたいで
その音を聞きたくなくて、耳を塞ごうとした時
はっきりと私の名前を呼ぶ誰かの声が聞こえた
クラスメイト達が私を呼ぶ声は水の渦の外で、
はっきりとは聞こえない。
籠っているような感じだ。
なのに今、はっきりと、
私のそばで誰かが私を呼んだ。
『はは……幻聴…かな?この渦の中に飛び込んでくるような人がいるわけ…』
個性が暴走してついには幻聴まで
聞こえるようになったのかと自分に呆れる
そんな私を包み込むように
暖かい何かが私に触れた。