第14章 10年越しの歌声
ヒーロー達が駆けつけ、
その場にいたヴィラン達は次々と倒されて行く
ヴィラン大軍の中心にいた男は
ワープゲートにより
その場から去ろうとしていた
その間も私は消くんのそばで
立ちどまったままだった
雄英高校に入学して、
こんなにも早く
自分の過去と向き合う時が来た
二度目の失敗は許されない。
私なら、私の個性なら、
きっと助けられる。
消くんだけじゃない、
13号先生の事も、皆の事も
軽い怪我なら
個性をちゃんと扱えるようになって、
失敗もなく治せるようになった。
けど、ここまで大きい怪我は…
あの日以来。
私が治癒しなくたって、
リカバリーガールの治癒や
病院の治療で間に合うかもしれない
ずっと避けてきた、けど、
それでも、
いつかは向き合わないといけない、
きっとそれは、今なんだ
大切な人が、苦しんでいる。
『……障子くん。相澤先生を、その場に下ろしてもらえるかな?』
「それは…何故だ?」
『お願い、』
「…分かった」
消くんを担いでいた障子くんに頼むと、
周りにいるクラスメイト達も
それ以上理由を聞かず、
消くんをその場に寝かせてくれた。
そして私は消くんのすぐ隣に座りこむ
まだ動けるヴィランはもうここにはいない
だから私は今個性を隠す必要はない
大丈夫、今の私ならきっと出来る
自分にそう言い聞かせてから
胸に手を当てて目を閉じ、
深呼吸をする
深く息を吸い込んで、
私は歌い始めた。