第13章 あなたは…誰…?
『ん…んーーーっ!…はぁ…ちょっと、何…?!』
人気のない端の方で立ち止まり
押さえられていた口がやっと解放されると
黙ってそのまま体を
岩の壁に強く押し付けられる
『…っ!?』
目の前にいるヴィランの男の体を
押して逃げようとするも、
私の頭の横をナイフが掠める
ナイフを壁に突き刺したのだ。
青く深い色の瞳が
逃がさないと言わんばかりに
私を見たまま微動だにしない。
やばい…逃げなきゃ…
この状況で個性を
隠すなんて言っていられない、
今すぐにでもどうにかして逃げないと…
怖い
怖い、嫌だ、逃げなきゃ、
そう思うのに、個性が発動しない
個性を隠すとか
そんなこと言っていられる状況じゃないのに
何故かこの目の前のヴィランに向けて
個性を使えない…
「なんなんだよお前…」
『その言葉そっくりそのまま返したいんだけど…。ていうか貴方誰なの…?何で私の名前知ってるの?目的は何?』
「…うるさい黙れ。俺の名前は…零(れい)だ」
零と名乗ったその男は私が逃げないように
強引にここまで連れてきた挙句
頭の横にナイフを突き刺してきて、
どう考えても私を殺すチャンスなのに
私を傷つけようとはしてこない
つまり、目的は
私を殺すことじゃないってことだ