第3章 塞翁が馬 〜銀時篇〜
「記憶は、全部もどってません。」
改めて突きつけられた現実にショックを受ける。
「その、この前会った時から、記憶が断片的に夢で見るようになったんです。」
「夢で、か。」
「はい。夢です。」
銀時の中ではあまり納得がいかなかった。彼も3Zの連中も皆、基本的に何かを切っ掛けにふと全てを思い出すような感じだったからだ。毎晩ちょこちょこと記憶を思い出すような奴は知っている限りでは誰もいない。しかし、もっと気になっている事を質問する為に、今はそれを置いておく。
「じゃあ彼女って何。どこで何を見てそんな事思ったんだ。」
候補としては猿飛あやめが銀時の中にあがった。前世も現世も納豆のねばねばの如く纏わりついてくるあの女が一番誤解しやすい気がしたからである。その他では志村妙だろうか。なんだかんだ万事屋の皆と花見などのイベントで一緒に居る機会が多いからである。事件の時も傷の手当をしてもらっている事が多い。しかし、目の前の少女の口から出た人物に、顔を引きつらせる。
「夢の中と、さっき、駅前で見ました。綺麗な金髪の女性ですよね。」
先ほど会った金髪の女。それは間違いなく月詠の事である。