第3章 塞翁が馬 〜銀時篇〜
嗚咽を抑えるように深く呼吸を何度か繰り返せば、少女は銀時の胸元に手を置き、体を離そうとする。しかし銀時はそれに応えなかった。
「銀時さん、離してください。」
その願いに銀時は不満を覚える。やっと会えたのに、それもあんな怖いめに合ったというのに、彼女は銀時の温もりから離れたがる理由がわからなかった。
「なんでだよ。」
遠慮なく疑問を口にすれば、返事はすぐに返ってきた。
「なんでって…。その、彼女さんに悪いですし……。」
………………………………………。
「はあっ!?」
思わぬ切り返しに、銀時は声をあげる。
「ちょっ、おまっ。全部思い出したんじゃねえのかよ! さっき泣いてたのは、きゃあ銀さんに格好良く助けられてうれしー、的な涙じゃなかったの。つーか彼女って誰、つか、何。え、今の俺ってどういう認識されてんの。」
てっきり、恥ずかしいからイヤー、みたいな感じの期待してたんだけど。彼氏彼女だから良いだろーとか言って、ちゅーでハッピーエンド的な展開になると思ってたんですけど。え、彼女?お前以外の?ありえねぇだろ。つーか万事屋で過ごしたラブラブ生活は記憶にないの。まさかそこだけ覚えてないとか?凹むよ?銀さんおもっきし凹んで泣いちゃうよ?