第3章 塞翁が馬 〜銀時篇〜
駅前の噴水にあるベンチに腰を下ろす。珍しく銀時の方が先に到着したらしい。暇つぶしの物を持ってこなかった事に多少後悔したが、すぐに思考はずれる。
そういや、アイツとデートした時も、バカみたいに早く待ち合わせ場所に来たんだっけ。
今となっては本当に懐かしい思い出だ。いつもは必ず見る結野アナの占いも、その日は番組が始まる前に家を出たのだ。待ち合わせは昼だったのに、緊張のあまり五時間も前に待ち合わせの場所に向かってしまった。おかげで最悪な運勢だとも知らず、散々な目に合ったのだが。
過去を懐かしんでいると、月詠がもう目の前に来ていた。
「なんじゃ、ぬしが早く着くなんぞ珍しいではないか。明日は槍でも降るんじゃないのか。」
「うるせえよ。」
「いつもよりダラけた顔をしておるぞ。一体どんな厭らしい妄想をしておったんじゃ。」
「だから、うるせえって。してねーよ、厭らしい妄想なんざ。顔も生まれつきだコノヤロー。」
軽口を叩きながら銀時は腰をあげ学校へ向かう為、来た道を戻るように方向を変える。振り返った一瞬、遠くに浅葱色の服を見たような気がした。
あれはまさか…。
急に動かなくなった銀時に月詠が不審に思う。
「どうした、銀時。」
「…………いや、なんでもねぇ。」
そう言いながらも、銀時の視線は同じ場所を見つめている。