第2章 塞翁が馬
二人の姿が消えるまで見届けた彼は、ゆっくりと私の方へ歩み寄る。それを見て私は口に詰め込まれた布を取り出し、露になった体を見られまいと自分を抱き締め顔をうつむかせる。先ほどまでは襲われた恐怖で震えたが、今はこんな姿を晒してしまった羞恥から震えが止まらない。
隣に座り込んだ彼は、ぱさりと彼の上着を私の肩に乗せられた。
「大丈夫だ。これ着てりゃあ誰にも見られねぇよ。」
不良を撒いた時とは違う彼の優しい声と、包まれた匂いに安心してしまう。
「銀時さん…。」
おもわず彼の名前をつぶやく。それが聞こえた銀時さんは驚きの表情を見せた。
「お前、思い出してたのか。」
そう問われて小さく頷けば、彼は柔らかい笑みと共に私を抱き締めた。
「そっか、そいつは良かった。早く助けに来れなくて悪かったな。けど、もう心配すんな。またお前を護ってやっから。」
その言葉を聞いた瞬間、私は泣いた。恐怖から解放され、こうして銀時さんに護られて、ひと時でも抱き締められて。色々な感情が交じり合い爆発したようだ。最近は夢の所為で涙を流す事が多かったが、声を上げて泣くのは久しぶりだった。