第2章 塞翁が馬
帰り道は憂鬱な気分で重い足を進める。心もそうだが、無理にパンプスで走った足も痛い。以前足を痛めたときよりも酷いかもしれない。ため息を深くついて、学校の帰り道でもある公園前を横切ろうとする。
「きゃっ!」
突然横に腕を引っ張られ、人気の無い公園内へ連れ込まれる。短い悲鳴をあげてしまったからか、髪を上を向くように引っ張られ、すぐに口の中に布らしき物を詰め込まれた。何がどうなっているのか分からず、掴まれた腕の先を見れば、二人の男がいた。週末だというのに学校の制服を着ている彼らは「都立夜兎工業高校」の不良達だった。制服を大いに改造しているものの、ボタンに描かれている紋章で明らかだった。
「静かにしてな。可愛がってやるから。」
ひひひ、と不気味な笑いとともに、腕を掴んでいた小柄の男は、私の腕を後ろに拘束し直した。
「はは、やっと大人しそうな奴捕まえられたな。この前のピンク頭と違って女はこうでないと。」
左頬に大きな湿布を貼った目の前の男がそう言いながら、舐め回すような視線で私を見た。一瞬で気持ち悪さと恐怖で固まる。この状況はまずい。彼らが何をしようとしているのかは明白だった。血走った目で前にいる男が私の体に触れようとする。それを見て、私は出来る限り暴れて声をだした。しかし一回りも小さい私の抵抗などではびくともしなかった。声も布の所為でわずかにしか外に漏れない。