第4章 堺
葉月中旬
蝉の声も響く頃
肩の傷もすっかり良くなり
少しあとは残ったものの
仕事や日常生活には
支障をきたさなかった為
今まで通り、
織田ゆかりの姫兼世話役の
役割を全うしていたのだった
⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰
「ー
いるか?」
『秀吉さん?
どうぞ』
「仕事捗ってるか?
しんどくなったらすぐに言えよ
いや、しんどくなる前に休め!
いいな?」
『もう、さっきもそれ聞いたよ
ちゃんと休憩も入れてるし
水分補給もしっかり入れてるから…』
肩の傷のせいでこれまでよりも
過保護になった秀吉
ましてや夏場ともなれば
熱中症で倒れる人が多く、
自分の仕事が一段落すれば
その都度の部屋を
訪れていたのだ
(相変わらずだなぁ)
もちろん秀吉だけでなく
お菊をはじめとする女中たち、
歴史に名を刻む武将も
また、声はかけられずとも
ほかの武士たちも
安土の民も皆
の体調や安否を
気にしていたのだ
(みんな大袈裟すぎるよ……)
この頃の悩みの種といえば
このような平和なものだったのに──