• テキストサイズ

戦国怪奇譚〜弐〜

第2章 目覚め




『っ』

ズキっと肩に痛みが走り
果物の入った籠を落としそうになるが
上から伸びた手がそれを阻止した

「起きたと聞いて駆けつけてみれば
何をしている」

『……信長様』

下から覗く信長の顔は
なんの感情もなかった

『あ、あのありがとうございます…』

「…俺を助けたことに
褒美はやるが礼は言わんぞ」

『え?』

「お前は何をしている
この大うつけ者がっ……」

『っ!』

殴られる!
ギュッと目を瞑ると

『……?』

触れたのは拳ではなく
優しい掌で頬を包まれた

「二度とするな」

(……そんな顔は初めて見た)

悔しそうな泣きそうな
どうにもならない
名前のない気持ちを
どう表情にしていいのか
信長自身にも分からないのだ


『…次は守ってくださいね
私の事』

「っ」

包んだ手をまた包むように
手を重ねた

『私はあなたの験担ぎですから』

いつもの笑顔
それは
信長がずっと見たかった笑顔で…




/ 30ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp