第1章 任務
すっかり日は沈み、空には月が見えていた。
時間による〝縛り〟——
縛りとは誓約のこと。
誓約を立てることで得られるメリットがある。
例えば能力の向上。
明月の縛りは、月が見える時間帯に術式の使用を制限すること。
それによって、術式の効果を向上させるのだ。
明月はナイフを両手で握りしめた。
徐々に呪力が手から刃先へと伝わって、
ナイフ全体を覆う。
彼女の呪力で武器が強化され、一撃の威力が増すのだ——
…
灰色の呪霊はまたしても鎌をふるって狂気の刃を飛ばしてきた。刃は明月に襲いかかる。
明月は走りながらそれを避けて灰色の呪霊にナイフを突き刺した。
ザブッと
突き刺したところから血が吹き出し、灰色の呪霊が落下する。
…——かと思うと、呪霊は跡形もなく消えてしまった。
すぐに明月は虎杖のそばへ駆け戻った。
「虎杖くん、応急処置をします!」
傷口に術式を施して出血を止めた。包帯をぐるぐると巻く。
「いってぇぇ! ……センパイ、ありがと」
うずくまって背中のあたりを手で押さえていた虎杖はチラとこちらを見てそう言った。
「はい! 痛みがあると思う、ので、無理をしないでね……」
「うん、大丈夫そう! ありがとな、明月センパイ!
ま、人より丈夫だからな。俺は大丈夫! さ、次行こーぜ」
「今のは応急処置。任務が終わったら必ず治療をしましょう。約束です」
「オウ!」
「よし、気を取り直して、二回戦も勝ちにいきますよ!」
「おっス」
二人は立ちあがり、三階の窓から廊下へと再び戻っていった。