第1章 任務
明月が割れた窓ガラスの方へ近づこうとすると、
そこから急に鋭利な風圧が飛んできて、
彼女の頬をかすめた。
頬から一筋の血が落ちる。
明月は一歩さがって身がまえる。
(こんなの、真近に食らったら身体がバラバラになってしまう……!)
「先輩! 俺にまかせて!」
虎杖はそう言って自分の周りにいた呪霊たちをなぎ払い、
割れた窓から飛び出してしまった。
「虎杖くん!」
「大丈夫だって。このくらい」
明月は窓から外をのぞいた。
呪霊は空を飛んでいた。
灰色の薄汚れた体をしていて、太いくちばしは一見鳥のようだが、小さな手は鋭い鎌のような形をしている。
と、次の瞬間、
灰色の呪霊は、鎌を振りあげて、虎杖めがけて振り落としたではないか!
その途端、凶器となった風が連発して虎杖を狙って飛んでくる。
しかし、
虎杖は軽い身のこなしで襲いかかってきた風の刃をうまくジャンプし、
建物の死角を使って避けながら、灰色の呪霊との距離をつめていった。
(並の身体能力じゃない!)
呪霊は、間合いをつめられて慌てている様子だった。
——虎杖が振りかぶる。
その時、
いきなり虎杖の真後ろから、別の鋭い風が飛んできて、
虎杖と向かい合っている呪霊もろとも虎杖に直撃してしまったのだ。とっさに彼は振り向いていたが、遅かった。
「こいつら、カマかけやがって……二匹いるなんてよぉ」
「虎杖くん!!!」
叫びながら、明月が屋根を伝って虎杖のもとに駆け寄った。
すると、制服の背中の部分が斜めに破れ、
破れたところからひどい出血だ。
明月は灰色の呪霊をキッと睨みつけた。
明月は虎杖を背にして、灰色の呪霊と向き合った。