第4章 きっかけ
◇◇◇
どれくらい眠っていたのだろうか。
七海が目を覚まして身体を起こすと、呪術高専の医務室のベッドにいた。
「おや、七海。起きたか」
部屋の隅から声が聞こえた。
「家入さん。私はどうやってここに?」
「明月が伊地知を呼んで君をここまで運んだんだ。覚えてないのか?」
壁に背をもたせかけた姿勢で家入はそう言った。
「……どうやら明月さんと会った後の記憶がないようですね」
「七海、君は倒れたのさ。彼女と会った後に」
「そうでしたか……。
明月さんには悪いことをしました。それで、彼女は?」
「今、外に出てるよ。電話がきたそうだ。
……君のことを心配してたぞ」
七海は自分の腕時計を見た。午後八時をまわっていた。
ベッドから立ち上がろうとすると、まだ傷口に違和感がある。
術式で治療をしてもらったとはいえ、休んでいた方がいいのかもしれない。