第4章 きっかけ
明月が向かったのは、とある市街地の一角だった。
周囲は似たような建物が立ち並び、連なる細長いビルの窓からは明かりが漏れ始めていた。
彼女はその通りを歩き、一つの人気のない小さなビルに入っていった。
自動ドアを抜けると、照明がエントランスをぼんやりと照らしている。
さらにその奥へと進むと、壁に背を預けて誰かが立っていた。
明月ははっと気づいて、その人物に駆け寄った。
「七海さん、手当てにきました。明月です」
七海はふと顔をあげて明月を見た。
「……明月さん、
私としたことが迂闊でした」
そう言った後、七海はふらりと前に倒れかけた。
「七海さん!?」
明月はそばに駆け寄り、七海の胸に腕を回した。
しかし、体格の良い七海の体重をすんなり支えきれるわけがなく、
明月はぐらっとよろけて倒れそうになる。
ぐっと足に力を入れて、バランスを取った。
明月は七海の顔をのぞき込もうとした。
右手がずるっと何かに触れたような気がして、手のひらを見ると、
べったりと血がついていた。