第3章 映画
その日から、明月はクローゼットからたくさんの服を取りだして、約束の日に着ていく洋服に悩んだ。
いつもの仕事着は汚れてもいいように全身真っ黒なのだ。
せっかく誘ってくれたのだし、黒装束で映画はいけなかった。
結局、悩んだ末に決めたのはシンプルなワンピースだった。
——夕暮れ。
待ち合わせ場所に七海がやってきた。
七海は、仕事が終わったあとに来たので、
ジャケットを脱いで腕にかかえてはいるが、ベージュのスーツにサングラス、
髪も上げていていつも通り。
それでも明月にとって、高専や任務先以外の場所で七海と会うのは新鮮だった。