第17章 沖田総悟《夏の御祭り》
「一緒に焼きそば食おうぜ」
○○は首を傾げる。ついさっき、土方に聞かされた。
「賑やかな祭りの席には腹黒野郎も似合わねーなァ。つか、テメェは仕事だ!」
真選組総出と土方は言っていた。
「せっかく出店が並んでるってのに、指銜えて見てるだけなんて損ですぜィ」
そう言いながら、沖田は背中からうちわを取り出した。そこには墨で『祭』の字が書かれている。
土方はタバコを灰皿に押しつけ、立ち上がった。
「世間が賑やかな時程、俺達は気ィ引き締めて仕事に当たんなきゃなんねーんだよ。それが江戸を護る真選組ってもんだ」
江戸を一望するかのように、遠くを見据える。
そんな土方の背後で一言、
「よく言うぜ、チンピラ警察二十四時がよォ」
間髪を容れずに、
「俺等がそんな風に言われんのは全部テメェのせいだ! 総悟!」
刀を鞘から抜きながら振り返った土方は、沖田に斬りかかる。
跳ねるように飛び退いた沖田は、そのまま廊下を走り出した。
そのあとを土方も刀を振り上げて追う。
「……もう行こうかな、お祭り」
残された○○は、ゆっくりと立ち上がると、そのまま屯所を後にした。