第17章 沖田総悟《夏の御祭り》
《夏の御祭り》
「ええ! 今年は行けないの!?」
「ああ。真選組総出で将軍様の護衛にあたることになった。祭りは他の奴と行け」
屯所を訪れた○○は、土方にそう告げられた。
「他の奴って、私、友達いないもん」
引っ込み思案な性格のせいか、○○には友と呼べる人は少ない。
「いないんじゃなくて、作ろうとしてねーだけだろ」
「そんなことない! 人と話すのが、苦手だから……」
「それにお前もいい年なんだ。いつまでも俺なんか誘ってねーで、恋人の一人や二人、作ったらどうだ」
土方は白い煙を軒先に届けた。
十歳離れた妹である○○。こうして屯所に出入りが出来るのは、他に行く場所のない○○が家に引きこもらないよう、屯所に顔を出すようにさせているからだ。
「そんなの作れたら、友達作ってるよ!」
「なら、仕方がねェ。一人で行け」
「一人はつまんないよォ。トシ兄!」
「じゃあ俺と行こうぜィ、○○」
顔を見せたのは、○○の数少ない友人。
一番隊隊長の沖田総悟。○○が黙っていても、飽きもせず話しかけてくれる唯一の人。
「大体、こんなのと祭りに行ったって楽しいもんも楽しくなくならァ。祭りの席でこの仏頂面は頂けねェ」
沖田は○○の隣に腰を下ろした。