第27章 沖田総悟《ドS彼氏と毒舌彼女》
「もう食わねーなら、そろそろ出るか」
総悟は席を立ち、表へ向かった。お金を払った気配はない。
真選組か土方さんにツケているか、逮捕歴のある店主だというから無賃で食べられる条件にでもなっているのだろう。
「総悟、何も食べなくていいの?」
料理の腕は確かと言っておきながら、何も頼まないのは解せない。
やはり、変態親父の作るものは食べたくないのではと疑ってしまう。
「飯はいらねーよ。俺はこれから、チャーシューを食うからな」
総悟は私を指し示した。
「私、メス豚じゃないから。あとこれ、願いじゃなくて報告?」
私は千切ってきた総悟の短冊をかざした。
『世界一のメス豚は調教完了』
「人の願い事、勝手に外してくんじゃねーよ」
「願いって、願い事じゃないじゃん」
「裏はまだ叶ってねーよ」
「表もまだ叶ってないじゃん。ていうか、叶う見込みなし」
「自覚ねーのか?」
自覚も何も、私は役立たずのメス豚なんかじゃない。
「ま、自覚があってもなくても、どっちでもいーけどよ」
総悟は私の耳に唇を近づけて囁いた。
「とにかく、○○が俺好みの世界一の女だってことに変わりはねェ」
ドSでも変態でも、総悟が私にとって世界一の男だってことにも、変わりはない。
「ザキ、ご苦労だな」
その頃、屯所前では私が書いた短冊が物議を醸していた。
「どうした? 変な顔して」
「いえ、今年は□□さんが短冊を書いてくれたんですけど、これ……」
「……これはそういうことか?」
「そうですよね?」
「ひどいな」
「ひどいですね」
『新しい縄が欲しい』
古い縄は、ささくれが体に食い込んで痛いんだ。
(了)