第7章 万・真・桂《新しい一年はニギニギガヤガヤ始めましょい》
「桂さん、パトカーが見えなかったんですか?」
桂に抱えられながら、○○は人混みの中を進んで行く。
「銀時の名が聞こえたものでな。○○殿がいるのではないかと思い来てみたのだ」
「答えになっていませんけど」
「○○殿が捕えられているとあらば、駆けつけぬわけにはいくまい」
「捕まった覚えはないんですけど」
「○○殿をおとりに銀時を捕まえる腹積もりだったのだろう」
何せ、銀時は我々攘夷志士の切り札だからなと、桂は勝手に得心している。
「それより、ここどこですか?」
桂の脳内が常人とはかけ離れていることは知っている。
それ以上の会話は不毛だと、話を切り替えた。
○○は桂の腕から逃れ、辺りを見回す。
沖田から離れるためとはいえ、ずいぶんと遠くへと来てしまった。
呼び出しを聞いていたら、銀時は参道の入り口へやって来ているはずだ。
「私、参道に戻るんで」
「待て。あそこには真選組がいるだろう」
「いてもいなくても、私は関係ないん……あ」
先程、知った顔を見つけ、○○は指をさす。
「桂さん、ここも危険みたいですよ」
真っ黒な制服に身を包んだその男は、土方と呼ばれていた真選組の副長だ。
「あれは! 土方!」
周囲の誰もが目を向けるような大声を上げ、みすみす自ら土方の視線を自分へと向けさせた。
桂の存在を認めた土方は、刀に手をかけながら向かって来る。
「きゃつは俺が引きつける! その隙に○○殿は逃げてくれ!」
「だから、私、関係ないんですけど」
○○の言葉を聞くことなく、桂は長髪をなびかせて走り去った。
時刻を見れば、いつの間にやら、新しい年を迎えていた。