第7章 万・真・桂《新しい一年はニギニギガヤガヤ始めましょい》
「『かぶき町からお越しの坂田銀時さん。いい年こいて迷子になった坂田銀時さん。お連れ様が心配しています。今すぐ参道の入り口まで来て下さい』」
音量を最大にしたパトカーのスピーカーから沖田の声が流れる。
○○の拳で伸びてしまった山崎に代わり、沖田が話を聞いてくれた。
平生サボり魔の沖田が、非番だというのに率先して仕事を行っている――
その奇怪な出来事を、普段の沖田を知らない○○は不思議に思っていない。
むしろ、悪評ばかりの真選組にも親切な人がいるものだと、評価をいい方へと改めている。
当の沖田は、捜し人が銀時だと知り、おもしろがって引き受けた。
「銀さん、聞こえてるかなァ……。どこ行っちゃったんだろ。いつも勝手にどっかに行っちゃうんだから」
銀時程マイペースな人はいないと、○○は常々思っている。
傍から見れば迷子の達人である○○は、自分の方が迷子になったとは思っていない。
「○○殿」
目一杯に背伸びをしながら周囲を見回していた○○は、背後からの声で振り返った。
「桂さん!」
目に映ったのは黒髪ストレートの男。
銀時を通じて知り合った桂小太郎だ。
マズい――咄嗟に○○は世話になった人物に目を向ける。
男はニヤけた顔でバズーカを構えていた。
標的はもちろん、ロン毛の攘夷志士。
「死ねェェ! 桂ァァ!!」
沖田は引き金に手をかけた。
だが、そこから弾丸が放たれることはなかった。
弾を放つ前にバズーカが真っ二つに分断された。
「エリザベス!」
白い生物が沖田とやりあっている姿は、瞬く間に○○の視界から遠ざかった。