第7章 万・真・桂《新しい一年はニギニギガヤガヤ始めましょい》
「今年中に殺されかけたのは局長なんです!」
「あ?」
その言葉に、土方は山崎の襟から手を放した。
「どういうことだ」
山崎の説明によると、初詣に訪れていた真選組局長の近藤勲が何者かに襲われたらしい。
地面に倒れ伏した近藤の横には、血で書かれた『天誅』の文字があったという。
「それで、近藤さんは?」
「病院に担ぎ込まれました。命に別状はないとのことです」
「犯人は捕まえたのか?」
「いえ。目撃者もいなくて……」
犯人はわからないと、山崎は言う。
「攘夷浪士の仕業か」
こんな人混みの中でワザワザ手を下すような輩は、鬼兵隊の高杉か、それとも……
犯人の目星を土方が考えている横で、
「近藤さんなら、さっきキャバ嬢軍団を追っかけて行きやしたぜ」
「あ?」
沖田は近藤に連れられて神社へ来ていた。
妙が『スナックすまいる』の面々と初詣に行く――
その情報をキャッチし、追いかけるように近藤は神社へとやって来た。
近藤が妙を発見して尾行を開始したため、沖田は別行動を取り、フラフラしている所で土方と遭遇した。
「つまり……」
犯人は十中八九、妙。
「アホらし。やってられっか」
元からイライラしている所に身内のアホくさい事件の発生。
一気にやる気をなくした土方は、一服して来ると言い残して姿を消した。
「今働いてるの、俺と副長だけなんですよ」
この大人数を俺一人で捌けと? と、山崎は溜め息を吐く。
顔を下げたと同時に、そこに先程から佇んでいる少女にようやく視線を向けた。
「人捜しをお願いしたいんですけど」
そろそろ口を挟んでもいいだろうと、○○は口を開いた。
山崎は心配そうな表情を浮かべながら腰を屈めた。
「お母さんとはぐれちゃったのかな? お名前は?」
ポンと、○○の頭に手のひらを乗せる。
土方に続いて二度目のガキ扱い。
「誰が子どもだァァァ!!」
キレた○○は、山崎の顔面に拳をめり込ませた。
もうじき年が明けるというのに、最後まで理不尽な怒りを山崎はその身に受ける。