第27章 沖田総悟《ドS彼氏と毒舌彼女》
「懲りずに今年も出しているんですね」
屯所の前には、昨年と同じく短冊を書くスペースが設けられている。
微風に揺れる笹を目にし、私は昨年のことを鮮明に思い出していた。
「□□さん」
門の前には、昨年私を呼び止めた地味な隊士――山崎さんが昨年と同じく立っていた。
「去年不評だったのによくやりますねェ」
あれから一年。
ちょくちょく顔を合わせるようになり、すっかり馴染みになった。
呪いの短冊を飾っていた近藤さんとも、死ねと書かれていた土方さんとも、今では知り合いだ。
そして、メス豚などと書いていたあの男に至っては――
「不評って程じゃ……まァ、好評ではなかったですけど」
どうもここの笹は変な人間を呼び寄せるらしく、
――子どもに見せられない
――短冊に書いてあった変な言葉を子どもが覚えてしまった
などという苦情があったとかなかったとか。
今年はどんな願い事が書かれているのだろうと、数枚に目を通す。
『友達がほしいZ』
『今度こそ厠革命を』
名前は記載されていないが、変人臭が真選組っぽい。
「なんで真選組って変人しかいないんですか」
「俺に聞かないでください」
その横の短冊には、見覚えのある言葉が書かれていた。
『お妙さんお妙さんお妙さんお妙さん以下略』
『あと土方が死にますように
テメーが死ね沖田』
去年と同じじゃん!
私は総悟が書いた短冊を裏返した。
『世界一のメス豚――』
「こんな所に突っ立ってたらチャーシューになるぜ」
デジャヴのように、総悟は昨年と同じ着流しで現れた。
この男に至っては、今ではなぜか恋人になっている。