第22章 高杉晋助《松下村塾のクリスマス》
晋助は溜め息を吐いた。
「夢枕には立ってねーな」
「それはそうだよ。私、生きてるんだから」
○○は表情を緩めた。
「俺の額になんかついてるか」
「え?」
「触ってただろ」
○○は顔を赤くする。
「眉間に皺が寄ってたから」
とくとくと、心音が高鳴る。
「晋助にはもっと、笑っててほしくて」
○○は顔を再び伏せる。
暗闇と静寂。銀時と小太郎のいびきだけが大きく○○の耳に入る。
「お前、自分の顔、鏡で見てみろ」
聞いたことのない優しい声に、○○は顔を上げる。
晋助は柔和な笑みを浮かべていた。
「今は○○の方が険しい顔してる」
○○の額に晋助は手を伸ばした。
「夢枕になんて、絶対に立たせねー」
眉間に寄せられた皺に、晋助の指が触れる。
「○○には生きててもらわないと困る」
晋助は真っ直ぐに○○の目を見つめた。
「○○がいなくなったら、困る」
静寂の中、凛とした晋助の声が○○の胸に大きく響く。
大きく息を吸い、○○は口を開いた。
「私、晋助のことが――」
「メリークリスマス!」
○○の告白は突然の大声で遮られた。
むにゃむにゃと、小太郎の寝言が聞こえてくる。
横を見れば、晋助は声の出所に目を向け、今まで見たことがない程に眉間に皺を寄せていた。
「晋助、メリークリスマス」
○○は口元を綻ばせた。
「私、晋助のことが好き」
晋助の顔が間近に近づき、その唇が○○の額に静かに触れた。
「○○、好きだ」
これからも一緒に、笑顔でクリスマスが迎えられますように。