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~あさきみじかしゆめ~ 銀魂短篇集

第21章 坂本辰馬《辰馬とハサミは使いよう》


「とにかく、攘夷戦争中、金時と並び称されて恐れられた○○がいれば百人力じゃ」
「昔の話でしょ。ていうか、金時って誰よ」
「何じゃー、昔馴染みを忘れたがか? 薄情なもんじゃー」
「どっちが」

 昔馴染みの名前を間違えている奴に言われたくはない。
 無意味だろうが間違いを正してやろうかと思った時、

「坂本さん! 敵襲です!」

 慌てて飛び込んで来た一人が告げた言葉に、目を丸くした。
 このバカの命が狙われているというバカバカしい情報は、まさか真実だったというのか。

「バカな」

 世の中はバカで溢れているとでもいうのか。



 甲板に出た私は、複数の艦船を目にした。
 快援隊を取り囲むようにそれらは宙に浮いていた。
 一見物々しい雰囲気だが、大砲などは向けられていない。

「ありゃ? おかしいぜよ。あれはマルコメ族のマークじゃのー」

 艦隊に記されたマークは、確かにマルコメ族のものだった。
 それは辰馬の命を狙っているという一族ではないようだ。
 彼等は交渉にやって来た。

「船に積んである毛生え薬を譲ってほしい」

 とのこと。
 とある星のとある要人とは、猩猩星のお偉いさんで、近頃、全身脱毛症に悩み、毛生え薬を所望していたらしい。
 毛深い者ばかりの猩猩星に、毛生え薬など売っていないのだとか。
 その情報をキャッチし、マルコメ族の一部の人がこうして乗り込んで来たようだ。
 マルコメ族なのに、マルコメが嫌な人がいるとは初耳だ。
 積み荷には限度があるから、後日また運びに来ると辰馬が伝えると、彼等は帰って行った。
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