• テキストサイズ

~あさきみじかしゆめ~ 銀魂短篇集

第21章 坂本辰馬《辰馬とハサミは使いよう》


「何じゃー、どうやら情報が錯綜していたようじゃの」

 命を狙われているというのは間違いで、積み荷を欲しがっていただけだった。

「私、何しにこんなとこまで来たのよ。これじゃ、私の方がバカみたいじゃない」

 無駄足もいい所だ。

「すまんのう」
「今度、こっちで何かあったら、すっ飛んで来てもらうから」

 今まで私は、何度か辰馬に呼び出されて駆けつけている。
 動いているのは、いつも私ばかりだ。

「当たり前じゃ。どこにおっても、大事な商談中でも、○○のためなら全部放っぽって駆けつけるぜよ」

 思いがけず真顔で言われた言葉に、私は面食らう。

「嘘ばっかり。駆けつけてくれたことなんてないじゃない」
「そりゃ、仕方ないろー。わしゃ、○○に呼ばれたことないぜよ」

 私は目を瞬く。確かに、自分から辰馬を呼んだことなどない。

「○○も忙しそうじゃき、めっそう連絡せんようにはしちゅうけど、時々、会いとうて堪らんちや」

 真っ直ぐに目を見据えられて伝えられた言葉に、私は狼狽する。

「……何をわけのわかんないこと言ってんの」
「わけわからんことないろー。わしがおまんに惚れちゅうこと、気づいちょらんことないろー?」

 気づいてなかったがよ。

「○○は鈍すぎじゃき」

 大きな口を開いて、あはははははと辰馬は彼らしい笑顔を見せる。

「○○はわしに会いたくないかもしれんがの、これからもわしが危ない時は駆けつけてくれんかのー?」

 鈍いのはお互い様だ。
 好きな相手でもなければ、突然の連絡に応じて毎回駆けつけたりするものか。
 私は、辰馬のこの笑顔に惚れたんだ。

(了)
/ 140ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp