●○青イ鳥ノツヅリ箱○●【イケシリ短編集】(R18)
第1章 Last Supper〈イケ戦/政宗/元就/現パロ〉
「私が、食べさせていいんですか?」
美弥の戸惑うような声に、伊達医師が力強く頷いて見せる。
「こういうのはな、むっさい男より可愛い娘から食べさせてもらう方が何倍も旨いもんだ」
「先生…言い方、言葉遣い…」
後ろから、こっそり満留が伊達医師の服を引くのを、当の本人、ちらりと舌を見せて軽くスルー。
「お前の父ちゃんな。さっき目を覚ました時、なんて言ったと思う?」
プリンとスプーンを困惑気に両手に持って、美弥が戸惑い顔で伊達医師を見る。
「”美弥、腹減った”だと。目を覚ました途端だぞ。お前の父ちゃん、猛者だよな」
「…もう、あの人ったらこんな時まで…」
美弥の肩に手を添えて、呆れたように笑う母親と目が合い、美弥の顔にも小さな笑みが浮かんだ。
「お父さん、私がプリン作るといっつも全部一人で食べちゃうんだよ」
「どんだけ美味いんだ、それ。聞いてたら腹減ってきたな…俺にもくれよ」
「だーめ!これはお父さんにあげるんだもん!」
心細げにしていた美弥の瞳に、子どもらしい無邪気な光が浮かんでいた。
伊達医師がそっと、満留を振り返る。
それがスイッチであるかのように、満留の顔にも笑みが浮かんだ。
「よし、じゃあ美弥ちゃん。この先生に取られる前に、お父さんを太らせに行こ!」
「うん!」
美弥の背を押し、歩きだそうとした満留の耳に伊達医師がふっと忍び笑う。
「お前、言い方。言葉遣い」
その顔に向けて、満留は思い切り舌を出して見せた。