●○青イ鳥ノツヅリ箱○●【イケシリ短編集】(R18)
第8章 今宵は桜の木の下で…〈源氏伝/鞍馬/NL〉
そして、そわそわ落ち着きのない様子の満留にようやく気付く。
「ところでお前は、何を一人で燥いでいる?」
「これも燥いでるとは言わないと思うっ」
話を逸らすように満留が笑うが、鞍馬が無言の視線で先を促す。
満留の頬が、上気する。
「え……と…」
満留の視線がふらりと泳ぐが、やがて、鞍馬の目をまっすぐ見つめた。
「鞍馬が…なんて答えたのかなって、気になって」
「何かと思えば、そんなことか。なぜ俺が答えねばならん」
「―――えっ?」
あっさりと返答拒否を宣う妖に、満留の瞳が途端に落胆の色を見せた。
「当然であろう。俺がお前をどうしようと俺の勝手だ。なぜに九十九ごときに断らねばならん」
「そう、だね。うんそれが鞍馬だもんね…」
僅かにまだ未練がましい満留の様子が、鞍馬の紅い瞳に映る。
その瞳の中の満留には、白い靄が未だ、纏わりついていた。