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●○青イ鳥ノツヅリ箱○●【イケシリ短編集】(R18)

第8章 今宵は桜の木の下で…〈源氏伝/鞍馬/NL〉





「………満留…満留」



不機嫌ながらも心を揺さぶる愛しい声が、満留の意識を浮上させた。

「いつまでつまらぬ顔を晒している」
「―――…こ…こは?」

頬に、体に、温もりを感じる。香りを感じる。
考えるより先に、愛しい妖のものだと心が感じ取り、心の底から安堵する。
だんだんはっきりしてくる視界に、黒い着物とそこから覗く胸元見えた。
風に流される髪が、頬を擽っては満留の目覚めを急がせた。

そして耳に、風切り音。

「―――あ、れっ?ここどこ…あ、空だね。じゃないよねどういう状況っ?」
「何を一人で燥いでいる」
「燥ぐというより、戸惑ってますっ!」

鞍馬の胸元をしっかと握り、経緯を述べよと涙目の無言でもって訴える満留の顔を見下ろして、やれやれと言わんばかりに鞍馬の口が一言応える。

「お前を異界へ連れていく」
「な、なんでっ!?」

混乱する満留と鞍馬の瞳が一瞬、重なる。
しかし鞍馬は応える代わりに。

「降りるぞ。落としはせん、気休め程度に掴まっていろ」
「えっ…わ、待って…っきゃ~~っ!?」

言うより早く黒い翼を大きく広げ、地上目掛けて二人の体は急降下していった。



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