●○青イ鳥ノツヅリ箱○●【イケシリ短編集】(R18)
第4章 Sing a song 第二幕〈イケ戦/顕如/信玄/BL〉
さて、気が済んだのなら大人しく寝かせろ。
「…いいのか?」
こちらから仕掛けた勝負でもない。
良いも悪いも、お前の気が済めばそれでいい。
「”愛されんだー”なんて、お前から誘ってくれるとは感激だな」
―――今、なんつった?
一瞬夢落ちでもしていたのか。
いや、むしろそうであれ。
さっきからこの男は何を言ってるんだ。
こいつの耳はどうなっている。
―――ん、耳?
これまで交わした会話を脳内再生してみる。
なるほど、そうか。
こいつの耳は、空耳なのだな。
気付いてしまえば、得心がいった。
いや、正確に言えばそれでも腑に落ちない点は山ほどあるが、この際全て、見ぬフリをしよう。
そちらがその気なら、こちらにだって手段はある。
「Ah, hold me tight.」
さぁ、聴き取ってみろ。
”阿呆みたい”とな。
「あぁ、お前が望むならいくらでも…」
などと言って、抱きしめてくるな。
聴き取れるんじゃないか、この熊野郎。
「I'm good!!」
「そうかそうか、そんなに俺の腕は具合がいいか」
都合よすぎるだろう、お前の解釈!
あぁ、夜の帳が落ち切っていく…
ボンネットを穢されたままに放置された愛車を思う…
「Wash my car…」
「”おしまいかー”?可愛いことを言ってくれるな…もちろん、これで終わりなわけがないだろう…?」
いいガタイをした男二人をその身に受けて、背中のソファがギシギシと悲鳴をあげる。
「君の歌声に恋をしたと言ったら笑うかな…」
もはや笑うしかない…。
「もう俺の負けでいい…お願いだ、もう一度 ”Sing a song.”」
「あぁ…寝具破損」
<終われ>