●○青イ鳥ノツヅリ箱○●【イケシリ短編集】(R18)
第4章 Sing a song 第二幕〈イケ戦/顕如/信玄/BL〉
噛まれた首の痒みに一瞬、眠気が緩んだ。
「何をしている…」
気のせいだった。やはり、眠い。
この男もまだ仕事で居残るようだ。この際、少し仮眠をとりたい…
少々煩い小蠅を払う感覚で軽く信玄の胸を押しやれば、逆のその手を握り返された。
やけに熱いその手がやたら、眠気を誘う。
あぁ、もう何もかもがメンドクサイ…
「なぁ…ひとつ、俺と勝負をしないか?」
…はぁ。
こいつは突然、何を言い出す?
そういう流れじゃないだろ。なぜに今。
なぜか自分にマウントポジを取る男の鈍色の瞳を見れば、どうして、至極本気らしい。
ホントに、どうした。
ついさっき自分がこの男に向けた言葉が脳を過ぎる。
決めたら梃子でも動かぬ。それがこいつだ。
もうなんでもいい。
適当に相手をして、眠りたい。
「……何で勝負する」
鈍色がキラリと光った。
…早まった気が、しなくもない。
「なぁに、お前の得意なことで構わないさ。お前の滑らかなそのネイティブ英語をもう少しだけ聞いていたいんだ」
「……お前はどうする」
「そうだなぁ…俺は逆に、和製英語を使わないということでどうだ?」
どうだというなら、ずいぶんアンフェアな条件ではある。
しかし何しろ、面倒くさい。
「勝負というが、何を賭ける」
「別に?ただもう少し、お前と戯れていたいだけだよ」
―――お前が眠りに落ちるまででいい。
耳元に落ちる信玄のスイートボイスは、女子どもには垂涎だろうが俺には虫唾だ。
まぁいい。要は寝てしまえばいい。
全てがどうでもよくなり、声に出すのも煩わしくおざなりに頷いて見せた。