●○青イ鳥ノツヅリ箱○●【イケシリ短編集】(R18)
第2章 Madness-狂愛-〈イケ戦/帰蝶/光秀/3P〉
「―――雛鳥でもあるまいに。簡単に刷り込まれてくれるな、ばか娘」
「ひぁっ!?」
後ろから伸びてきた手が、満留の内腿をつっとなぞる。
それとは別にもう一本、後ろから伸びる逞しい腕に、帰蝶へと伸ばした満留の手が捕らわれる。
そのまま満留の顔の横に引き戻されて、柔らかな口唇が水音を立てた。
「俺のことを忘れてくれるなよ」
「…み、つひ―――んぅっ!」
後ろから顎を掬われ、強制的に振り返らされた先に柔らかな口唇が落ち、満留の呼ぶ名を飲み込んだ。
「ん…っんぅ、は…ぁっ」
塞がれた口唇が、驚きに間隙を開けば、すかさず舌が忍び込んで満留の口内を蹂躙する。
その舌の動きは的確に満留に甘い疼きを生み出していく。
抗えず、苦し気に吐息を吐いて満留が瞳を開いた先に、黄金の瞳が楽し気に揺れていた。
背中に、光秀の胸板の温もりを感じ、満留の躰が熱を持つ。
「邪魔をするな、光秀。興が冷める…」
剣呑な帰蝶の声音が耳に響いて、光秀の口唇が未練を満留に残して離れた。
「殿(しんがり)は俺の定石…とはいえ、先鋒を譲ってやったのだ。これくらいの報いは許せ」
肩で息をつきながら、満留がちらりの盗み見た帰蝶の瞳は、楽し気な光秀の声とは裏腹に熱を孕んで鋭く睨む。
その視線をものともせずに、光秀の手が内腿からなぞり上がって、満留の臍の周囲に戯れた。
満留の躰は従順に光秀の僅かな愛撫にびくりと跳ねるも、溢れそうな声は呼吸ごと飲み込んだ。
帰蝶の燃える萌黄の瞳に、一欠けらの理性が満留を戒める。
「帰蝶、さっ…ぃや、ぁ…っ」
「おや、可哀そうにな…お前が睨むから満留が怯えているぞ、帰蝶」
満留の、顔が蒼褪める。
否定を込めて帰蝶を振り向くが、帰蝶は呆れを含んでなお光秀を睨んでいた。