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●○青イ鳥ノツヅリ箱○●【イケシリ短編集】(R18)

第1章 Last Supper〈イケ戦/政宗/元就/現パロ〉




「ほんと、変わらないよなお前…」


伊達医師の言葉に、満留の肩がピクリと揺れた。

「こんな怖がりがいるのかってくらい、良く泣いてたな。検査がうまく取れねぇとは泣いて、言葉が聞き取れねぇとは泣いて…」
「なんで、知ってるんですか…先生の前で泣いたこと、ないですよね?」

「いっつも、ここでこっそり泣いてたな」

目の保冷剤をこっそり頬に充て直す。
なんだかそこが、熱い気がした。

「…ほんとに、よく見てたんですね」
「怖ぇだろ?」

背中の熱が、震えて笑う。

「もう絶対、泣かないんだって決めてたのにな」

ぽつりと零したその言葉を、伊達医師は何も言わずに聞いていた。
夕闇の香りが混じった風が、二人の髪を揺らして流れた。

「…お前を泣かせてんのは、俺だな」
「なんでちょっと嬉しそうなんですか、Sですか。絶対、先生なんかのせいじゃないです」

俯いた満留の目が再び保冷剤の陰に隠れる。

「…泣き虫だからER外された、私のせいです」

背中の医師は、何も応えない。
それを良いことに、満留が付け足す。

「…もう泣きませんって言ったら、またERに戻してもらえます?」

「―――泣いていい」

「…え?」

保冷剤を持つ手が思わず、瞼から落ちる。
薄夕闇に小さな星が煌めく夜が、満留の瞳を彩る。

「泣いていいんだよ、ばーか。お前は、そのまんまでいい…そのまんまがいい」



満留の視界を覆うその夕闇の空が、何に似ているのかに気づいてしまった。


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