●○青イ鳥ノツヅリ箱○●【イケシリ短編集】(R18)
第1章 Last Supper〈イケ戦/政宗/元就/現パロ〉
「…あー、やばい。明日絶対、目が腫れるこれ」
茜に染まった空がゆっくり夜に姿を変えていくのをぼやけた視界で眺めながら、満留が空に溜息をつく。
涙にぬれたハンドタオルを目に押し当ててみる。
「ダメだ、ぬるい…」
焼け石に水。
諦めてタオルを降ろした茜色の視界が再び、ヒヤリと何かに覆われた。
「つめた…っえ、何これ冷たい冷たいっ!?」
「ちゃんと冷やさねぇと、明日目が開かねぇぞ。お前明日も出勤だろ?」
「―――だから、把握しないでください、怖い…」
その声で、正体がわかる。
甘んじて瞼を冷やして、顔を隠した。
「いろいろと、もう…なんでですか伊達先生…」
「何がだ?」
喉で小さく笑う声がして、満留の座るベンチの後ろに陣取る気配がした。
何がと聞かれれば、本当にいろいろ疑問が浮かぶ。
何で、ここにいることがわかったのかとか。
何で、泣いてることがばれたのかとか…
「ほら、もたれてろ」
何で…背中に感じる体温が、こんなに優しいのだとか。
「片手貸せ…やる」
何で、目に充てたタオルにくるんだ保冷剤は文句なしに冷たいのに、缶コーヒーはぬるいのかとか。
「いつから、見てたんですか?」
「お前がERの専属STに入ってきたくらいか?まぁ、今では回復期に取られちまったわけだが」
「そういうことは聞いてませんし、やっぱり怖いですよ伊達先生」
「お前が変わり映えしないだけだろ?」
再び、喉で笑う声がした。
この笑い方、昔から…変わらない。
実は、少し好きだった。