第7章 出会ってしまったひとりと一振り 〔肥前忠広〕
「今迄さぼりすぎていたからね、またちょっとしたら次の男士を顕現させるよ」
ふん、と鼻息荒く答える審神者に、大和守や今剣は返す。
「今度は清光に来て欲しいなぁ」
「岩融に来て欲しいです!」
「あはは、努力はするよ」
一期の顕現で喜ぶ乱や鯰尾の姿を見て、どの男士も自分の関わりのある刀に早くきて欲しいのだろうな、と思うと大和守や歌仙や今剣を知る男士を早く顕現しなくちゃ、と審神者は心に思うのだった。
この日の夜は一期の顕現祝いの宴会となり、それまでの間、乱と鯰尾は顕現した一期に本丸内を案内しつつ、この本丸がどういう状態か顕現して何をするのか説明した。
「なるほど、我々が刀からヒトの姿に顕現するというのはそういう意味があるのですな」
一期が廊下を歩きながら細いあごを片手でさすり、鯰尾がうん、と答える。
「慣れないヒトの姿ですが、早く皆と同じように出来るために鍛錬せねばなりませんな。鯰尾、乱、お手伝いをよろしく頼みます」
一期は二振りを順に見おろして頼み、二振りは勿論と頷いた。
そして楽しい宴会は、一期がまだヒトの身体に慣れていないことも有り早々にお開きとなり、乱と鯰尾と一緒に粟田口の部屋へ引き取っていった。
残った審神者と男士で片付けをし、今剣が眠そうだったので宗三がもう休みましょうと連れて行き、歌仙がお茶を淹れたので歌仙と大和守と審神者で休憩となった。
「乱ちゃんとずおくんがあんなに喜ぶとは思わなかったな」
審神者がお茶受けに出された羊羹をひときれ取りながら言うと歌仙が言う。