第6章 出会ってしまったひとりと一振り 〔肥前忠広〕
霊力が弱くてもその質は良いのではないか、と宗三も少し興奮した面持ちで話す。
「…3時間20分…もしかしたらいち兄の可能性もあるんだよね」
乱はこくりと喉を鳴らし、鯰尾は乱の期待に満ちた感情を理解しつつも違っていたら、と乱に釘を刺すように言う。
「他にも3時間20分の刀がいるから、あんまり期待しないほうがいいぞ」
「うん…わかっているけど…」
鯰尾に言われ乱ははっとするものの、やはりと思い乱れるのだった。
鍛刀の時間、それぞれ自分の持ち分の仕事をするものの、何となくそわそわと落ち着かずに何度も時間を確認していた為、歌仙からとうとう全振り招集がかかり広間で待機する事になった。
歌仙がお茶とせんべいを用意したものの、皆が落ち着かない様子でため息をついたりして時間をぼんやりと過ごしているうち、ようやく時間が近くなり全振りで鍛刀部屋へ向かった。
鍛刀部屋の前に設定された時刻が全て0になり、部屋の中が光ったと思うと桜の花びらがひらりと隙間からひとひら外に舞う。
「来た…!」
全振りがごくりと喉を鳴らす中、静かな音を立て部屋の中から障子が開いた。
「…わ、どうしたの、みんなで」
審神者は大きな息を吐きながら障子を開き、開きながらつむった目を開いて、途端目の前に並んでいた六振りの顔に驚く。
そして驚いた後、満面の笑みを浮かべ乱と鯰尾に向かって審神者は言った。
「お待たせ」