第6章 出会ってしまったひとりと一振り 〔肥前忠広〕
笑顔の審神者の後ろから現れたのは、水色の短い頭髪を持ち、スラリと細身の品の良さを感じさせるたたずまいを持つ青年の姿をした刀剣男士だった。
「…いち兄…」
乱と鯰尾が驚きつつ声をあげると、いち兄と呼ばれた男士が口を開いた。
「私は一度一振。粟田口吉光の手による唯一の太刀。藤四郎は私の弟たちですな」
「いち兄!」
乱と鯰尾が立ち上がり両端から一期一振に抱き着いた。
「乱…鯰尾…先に顕現していたのですな」
一期は抱き着かれて少し驚いた様子を見せつつ、それがすぐ自分の弟である乱と鯰尾と気付くと優しく二振りの頭を撫でた。
「待たせたようですな」
一期の言葉に乱は嬉しそうに言う。
「うん…ううん。この本丸はまだ新しくて、ここにいるぼくたちしかいないから、将来いち兄は古株になるよ」
乱の言葉の意味が瞬間わからず一期はちょっと首を傾げ、鯰尾がその言葉を付け加えた。
「乱の言っているのは、この本丸は新しくてまだ俺たち六振りしかいないんだ。七振り目がいち兄だから、いつかもっと大所帯になったとき、いち兄は古株のひと振りになるってことだよ」
意味に気付いた一期は「ああ」と納得し、ぐるりと自分たちを囲む刀たちを見、そして審神者の姿に改めて気付く。