第6章 出会ってしまったひとりと一振り 〔肥前忠広〕
障子が閉まると歌仙たちは立ち上がり、そのまま無言で部屋の前から移動する。
「誰が来るのかな」
鍛刀部屋から少し離れると乱が小さい声で鯰尾に話し掛ける。
「こういっちゃ悪いけれど、璃杏さんの霊力から短刀か打刀だと思うけど」
「そっかぁ…いち兄にはまだ会えなさそうだね…」
粟田口藤四郎唯一の太刀、いち兄と呼ばれる一期一振の事を指している。
乱は顕現してから一期一振に会うのをずっと待っているのを、鯰尾は聞いていて知っていた。
「そうだな。俺もいち兄に会いたいから、遠征で出られるようになったら資材稼ぎに行こうな」
「うん」
鯰尾は乱の肩をぽんと軽く叩いて、乱を励ますように声を掛けた。
しばらくして宗三が鍛刀部屋から戻ってきて、いつものようにおっとりと告げる。
「3時間20分です」
「3時間20分だって?打刀の時間じゃないぞ?太刀じゃないか」
時間を聞いた歌仙は驚いて声をあげる。
「そんなに資材をつぎ込んだのか?」
続いて資材を心配する歌仙に宗三がさらりと答える。
「いえ、つぎ込んでいないですよ。太刀が出る最低量しか使用していません。霊力が弱いと言われていますが、うちの主はもしかしたら優秀なのかもしれませんね」