第6章 出会ってしまったひとりと一振り 〔肥前忠広〕
「そろそろ鍛刀をするかなぁ…」
審神者のつぶやきにその日の近侍としてついていた大和守は、ぱぁと顔を輝かせた。
「うん、やろう、新しい男士に来て欲しい」
大和守は立ち上がり、他の男士たちに審神者が鍛刀をしようと思い立ったと知らせに走り、すぐにばたばたと複数の足音が聞こえてきて、この本丸の六振りの男士たちが揃った。
「やる気になりましたか?璃杏さま」
短刀二振り目として顕現した今剣が茶化すように声を掛けてくる。
「やる気になったとかじゃなくて、せめてもう一部隊分いないと近い場所の遠征すら出られないでしょう?」
審神者の答えに歌仙がうんうんと頷く。
「きみもようやくやる気になってくれたね。確かに僕たちはちょっとした遠征すら行った事がないからねぇ」
「う…ごめんってば」
審神者が首をすくめると、三振り目の打刀として顕現した宗三左文字がおっとりと言う。
「いつ鍛刀を行います?」
「ええと、私がからだを清めないといけないから明後日かな」
「わかりました。僕が準備しましょう、良いですか?」
宗三が歌仙に許可を得るように聞き、歌仙はもちろんと言わんばかりに頷いた。
「じゃあ今夜から、食事が別になるけれど…」
食事も精進落としの食材や調理となるため、歌仙のその言葉に審神者は頷く。