第6章 出会ってしまったひとりと一振り 〔肥前忠広〕
「毛布、持ってくるね。今日はこのままここで寝かせてあげよう」
審神者は立ち上がり、部屋へ行って毛布を運び、寝てしまった乱と今剣にそっと掛けた。
「歌仙さん、片付け、手伝うよ」
「ああ、助かる。僕だけでは大変だよ」
苦笑する歌仙の言う通り、卓上の上は食べ散らかした皿やコップでいっぱいだった。
審神者と大和守と鯰尾が卓上を片付け皿を洗い、歌仙と宗三が翌朝の食事の仕込みを終えた頃にはすっかり日が変わっていた。
「おつかれさま。短刀が寝ているし僕も今日は広間で寝るよ」
「おつかれさま。歌仙さんには苦労かけちゃってばかりだね。本当にありがとう。おやすみなさい」
「そう思うなら、僕たちが早く強くなれるように本丸を強化して欲しいものだね」
審神者は歌仙に礼を言うと、歌仙はふ、と笑って小さな皮肉を言うが、審神者には初期刀の皮肉は小言と同じなので「そうするつもり」と返した。
他の三振りはそれぞれの部屋に戻り、審神者も自室に戻る。
廊下を歩きながら静かに周囲を照らず月に気付き、審神者は少しの間酔い覚ましもあって立ち止まって眺める。
そして部屋に戻って布団を敷きながら、本丸に帰る前にちらっと見たように思う、あの男士の姿が頭から離れない。
「あの刀、何て言うんだろう…いつかうちの本丸にも来てくれるかなぁ…」
敷いた布団にもぐり込み、演練の事を考えているうちに審神者も寝入った。
数日は初めての対戦の反省と今後の対応、演練後の事務処理など細々した作業を審神者は行い、刀剣男士たちは本丸運営のいわゆる家事や雑事を済ませつつ日々を過ごした。