第6章 出会ってしまったひとりと一振り 〔肥前忠広〕
首を左右に小さく振る審神者に鯰尾は少し首を傾げるものの、何でもないという言葉に審神者の手を取り歌仙たちのところへ鯰尾は向かった。
「さ、帰ろう」
建物を出ると各本丸のゲートを開く様子が見られ、その場で審神者と刀剣男士たちが消えていく。
「みんな、それぞれの本丸に帰るんだね」
「あぁ、どこかの時代の彼等の本丸だ」
歌仙が感慨深い様子で言い、鯰尾が「あ」と気付いて言う。
「早く戻ろう。万屋が閉まっちゃうよ」
審神者も気付いて転送装置をすぐに取り出す。
「そうだね、ゲートを開けるよ」
転送装置をかちりと動かし、すぅ、と審神者たちは自分たちの時代の本丸へ戻って行った。
少し離れたところにいた、いかにも慣れた様子の審神者と極めた姿の刀剣男士がいる部隊から、審神者たちが消えるのを見ていた男士が一振りいた。
『…あの様子だと初心者審神者か…』
その男士は小さくつぶやき、自分の審神者が転送装置を動かしたのを見て一緒に自分の本丸へ戻って行った。
万屋へ寄った審神者たちはあれやこれやといろいろな食材を買い、本丸に戻ってから歌仙を中心に全員で料理を作り、ついでに審神者がこっそり買っていた酒も出てきて、歌仙が嫌な顔を一瞬したものの結局酒宴となった。
反省は明日と審神者が叫んだものだから全員で食べて飲み、ひと騒動となってやがて酒で潰れたりしてそのまま広間で寝てしまう男士もいた。