第6章 出会ってしまったひとりと一振り 〔肥前忠広〕
審神者の言葉に男士たちは顔を見合わせ、そして歌仙が少し困ったような表情で言う。
「これくらいで謝られていたら…そうだね…例えば演練とはいえ僕たちの誰かが折れたら、切腹するかい?」
切腹という言葉に審神者は涙を流したまま歌仙を見る。
すると歌仙は真剣な表情をし、涙顔の審神者を見つめて続ける。
「勝負は勝つ者がいれば負けるのもいる。当然だよ。今日の事を糧にして、僕たちはこれから強くなれば良いだけじゃないか」
「そうですよ、審神者様。そうやって刀剣男士たちは強くなるんです」
こんのすけもテーブルに乗って審神者の真横で伝える。
「…うん…がんばるよ…次はみんなが勝てるように…」
ぐすぐすと鼻をすすりながら審神者は鞄に入れていたハンカチを探し、ごしごしと顔を拭いてついでに鼻もかんだので、歌仙が途端に嫌な顔をした。
「それ、洗濯するの僕なんだけど…」
すると鯰尾が励ますように元気に言う。
「あはは、そのハンカチはまず璃杏さんに下洗いをしてもらおうよ。さすがにひどいね」
明るく言う鯰尾に、乱も同調する。
「本当だよ、さすがに鼻水ついたハンカチを歌仙さんに洗濯させるのはダメだよね」
「う…ごめん…自分で洗うよ…」
審神者が謝って少し雰囲気が明るく変わったところで審神者は立ち上がった。
化粧ははげちゃったけれど今日はもう良いよね、そう思いながら。