第6章 出会ってしまったひとりと一振り 〔肥前忠広〕
そして男士たちは演練の転送位置へ移動し、それぞれの審神者は決められたブースに入った。
そのブースの椅子に座るとこんのすけが教える。
「この中では審神者様は刀剣男士の戦いぶりを見るだけです。指示が出来ないようになっているのです」
「え、そうなの?」
てっきり指示が出来ると思っていた審神者は、こんのすけを見て目を丸くする。
「だって本当に時間遡行軍と戦う時に指示は出せませんよ?あの中で指示が出せるのは隊長である歌仙兼定です」
こんのすけの言葉に審神者は改めて気付く。
みんなで考えた作戦とは言え、ひとつ間違えると刀剣男士たちが折れてしまうかもしれない、本来はそういう状況であること。
いくら練習とは言え本気で考えなくてはならないのだ、と。
審神者は目の前の複数のパネルを見て、それからこんのすけを見る。
「わかった。たかが演練、でも本気でやらないとみんなが危なくなるんだね」
「おわかりいただけて良かったです」
こんのすけはにこりと表情を和らげ、そして言った。
「さぁ、始まりますよ」
ブザーが鳴り対戦開始となった。
錬度の差や能力はいくら初心者本丸同士とはいえ明らかで、どれだけ歌仙たちががんばっても相手の男士たちには歯が立たず、残念ながら敗退で終わった。