第6章 出会ってしまったひとりと一振り 〔肥前忠広〕
「ここでは敵同士になりますが、あくまで互いの男士たちを成長させるためのものです。それに私たち審神者にも実戦のための勉強と思って、多少大胆にしても良いと思います」
「そうなんですね…ありがとうございます」
審神者は再度頭を下げると部屋に入り、本丸番号が表示されている待機場所に入った。
「あの審神者様が言われたことは本当です。この演練では刀が折れることが無いので、実戦なら折れる状況まで男士を追い込む審神者様もいるんですよ」
こんのすけが審神者に真剣な顔付きで言うが、審神者は首を左右に振る。
「私はそこまでみんなを追い込めないよ。とりあえずここ数日で組み立てた作戦が、どこまで通用するかみてみたいかな」
「璃杏さん、俺たち、実戦だと思って戦うから折れる状況まで持ち込んでも良いんだよ」
鯰尾が手をぐっとこぶしを握るのを見て審神者は息を呑む。
「慣れてきたらそういう事も言えるかもしれないけれど、今日はそこまで言うつもりは無いよ。とにかく今、みんなと私の実力がどのくらいあるのか知りたいの」
ブザーが鳴り三戦目が終わった事を示す。
審神者にテーブルを教えた審神者側が勝ったようだった。
「あ…ちゃんと見てなかったな…」
審神者が焦って呟くと、歌仙が仕方ないな、という様子で審神者に言う。
「僕が見ていたから後で教えるよ。きみはどうも心配しすぎだ。僕たちの事をもっと信じて欲しいかな」
「うん…そうだね…とにかく気をつけてね」
審神者は歌仙の言葉に彼等を信じなくては、と自分を鼓舞した。